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Lancet掲載論文




『ランセット』論文和訳 「 日本の臨床試験に関する患者の懸念」


イデアフォーはより良い医療の実現を目指す市民団体で、1989年に乳がんを乳房温存療法で治療した患者によって設立されました。ICの推進を第一の目的に、医療情報の収集と提供を行っています。日本では患者が医療情報を手に入れるのはなかなか難しく、特に、臨床試験に関する情報は入手することが困難です。
1997年4月、新GCP(臨床試験の実施基準)が施行されました。しかし、日本の臨床試験は、新GCPに基づいて実施されたとしても、 相変わらず患者の視点が含まれていないので、私たち患者にとって、受け入れ難いものです。
一例として、UFT/CMF比較試験をご紹介します。



1995年、国立がんセンターのなかに、N・SAS−BCが厚生省の研究事業としておかれ、ハイリスク、リンパ節転移陰性の乳がん患者に対する術後補助化学療法、UFT/CMF比較試験がデザインされた。この試験は96年10月に始まり、1300人の被験者を集めることを目指して、国立がんセンターを中心に42施設が参加している。

私たちはUFT/CMF試験のプロトコルと英文の参考文献を読み、この試験に正当性がないことを確信した。新GCPに則り、この試験のデザインは一見整っているように見える。しかし、患者の視点から見ると、科学的にも倫理的にも、この試験を正当化することはできない。

上記の患者にとっては、多剤併用のCMFが「世界的な標準治療法」である。だが一方、単剤のUFTにはその効果がCMFと同じくらいだということを示すデータがない(1、2)。
CMFとUFTを比べること自体が問題であり、ヘルシンキ宣言U-3(下記日本語訳参照)に違反している。

この試験のプロトコルの記述は不正確で、「CMFが世界的な標準治療法だ」ということを述べていない。患者への説明同意文書も、正しい情報を提供していない。プロトコルによれば、CMFを受けた患者の無病5年生存率は75%であり、無治療群の生存率は67%である。そして、もしUFTの5年生存率が67.5%以上(CMFの5年生存率より 7.5%低い)であれば、CMFと同等に考えると結ばれている。 67.5%という数字は、無治療群よりわずか0.5%高いというもので、患者にとっては受け入れることはできない。

97年12月、国立がんセンターと厚生省に、この試験の中止を文書で申し入れた。私たちはまた、国立がんセンターと試験を実施している他の施設の倫理審査委員会へ、「試験中止の要望書」を送付した。しかし、どこからも返事はきていない。
97年12月に、国立がんセンターの医師と話し合いをした。私たちの反対にもかかわらず、医師たちは、科学的な検証がなされないままに汎用されているUFTを使い続けるために、この試験を正当化しようとした。説明同意文書の内容が不正確だという私たちの指摘に対して、医師たちは、説明同意文書を改訂すると明言した。けれども、私たちは、国立がんセンターから直接改訂版をもらうことはできず、なんとか他の所から入手することができた。内容を見ると、私たちが改訂して欲しいところは一つも変わっておらず、情報は、より患者を混乱させるものになっている。

イデアフォーはUFT/CMF臨床試験の中止を求め続けるとともに、一般の人々に臨床試験に関する注意を喚起していきたい。

(投稿及び訳:青木栄子)




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